ヌンチャク型シリコーンチューブ -私のポイント- 涙道手術と眼瞼下垂症手術
ヌンチャク型シリコーンチューブ-私のポイント-涙道手術と眼瞼下垂症手術
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執筆者(掲載順)
栗橋克昭,成岡純二,大野木淳二,永原幸,宮久保純子,宮崎千歌,中川喬,廣瀬美央,五嶋摩理,今野公士,忍足和浩,河合憲司,黒田真一郎,寺西千尋,上 岡康雄,田中謙剛,森寺威之,保手浜靖之,新田安紀芳,湯田兼次,芳賀照行,舘奈保子,原吉幸,西條正城,岡和田紀昭,平山健太郎,波多野吟哉,植木麻理
つい最近まで,流涙症の治療は一握りの眼科医により細々と行われ,眼科診療のはみだし者だった。しかも,涙道狭窄を憎悪させる金属ブジーが普及し,ブジー で治らない場合に涙嚢鼻腔吻合術が唯一の治療法として認められていた.チューブ挿入術は有用であるが認知されなかったのは,正しく涙道に挿入することがむ ずかしく,かつ挿入が困難であったためである.
この状態を一新させたのが栗橋克昭先生のヌンチャク型シリコーンチューブ(NST)である.このNSTの導入により流涙症の治療が容易となり,普及したの は,わが国ばかりでなく世界的な業績である.私自身も手製または市販のCrawford型チューブを長年苦労して使用していた.その頃を思うと隔世の感が ある.流涙症のファーストチョイスはNSTとしているので,すでに5,000例余りに使用している.これにより涙嚢鼻腔吻合術は流涙症症例の10%以下に 減少した.涙小管閉塞が治らない場合はJones Tubeを使用しているが,その比率も低下している.
NSTが発表されてから14年余りがたち,NSTについての「総括の時期」に入っている.このたび本書が刊行されるのは流涙症に悩む患者さん,眼科医にとって朗報である.NSTを理解するには欠かすことのできない本であり,ぜひ座右の書として欲しい.
NSTは侵襲が少なく,高齢者にも外来で容易にできる治療法である.流涙症の初期には特に有効であり,侵襲が大きなDCRやJones Tubeの対象となる症例を減らすことができる.早期診断とNSTによる早期治療が肝要である.
(推薦のことば:札幌医科大学 名誉教授 中川 喬)
内容目次
I | 総論 涙嚢鼻腔吻合術【栗橋克昭】 | ||
1.涙道手術(含:眼瞼下垂症手術)2.NST-新しい涙道手術のために(含:眼瞼下垂症手術) | |||
II | 総論 | ||
1.NST挿入術のための臨床解剖の重要性/2.涙道道の臨床解剖-NST挿入時の注意点/3.DSIの適応とNST挿入手技 | |||
III | 「解剖」を中心として | ||
1.NST挿入術に役立つ涙道内視鏡検査/2.涙道内視鏡と鼻内視鏡を使用した涙道診療/3.NSTと涙小管閉塞の治療/4.小児の涙道疾患の診断と治療 | |||
IV | 「手術手技」を中心として | ||
1.NSTをはじめて使用する人のために/2.術式によるNST使用法/3.NSTの手術手技の実際/4.NST手術手技の問題点/5.NSTの適応と手技的な注意点/7.チュービングの奏効機序と挿入テクニック/8.鼻内視鏡下に確実に行うNST留置法と鼻腔内からの抜去法/9.DSIの実際/10.NSTの特長を生かした挿入法/11.NST単独で成功率を上げるために/12.NST挿入法/13.鼻内視鏡の活用法/14.涙道内視鏡を活用NST挿入術/15.NSTと眼球突出/16.涙嚢鼻腔吻合術鼻内法および小児の涙道治療/17.先端湾曲涙洗針ブジーと先端湾曲NST挿入術 | |||
V | 「症例」を中心として | ||
1.NST施行95例の臨床的検討/2.NSTの使用経験-先天性鼻涙管閉塞症の治療/3.涙道内視鏡下NST挿入術を施行した鼻涙管閉塞症例 | |||
追補:涙道閉塞疾患と眼瞼下垂症 |